2020年11月
ロータリー財団委員会
【ロータリー財団 オリエンテーション資料】
―― ロータリー財団って何 ? ――
※
きょうのフォ―ラム卓話では、私たちのロータリー財団への寄付が一体どのように
活用されているのか、皆さんとご一緒に見ていきたいと思います。
切り口としては、ロータリー財団は、なぜ国際ロータリーと別の組織になっているのか、というところから資料を作成しました。
Ⅰ.11月は「ロータリー財団月間」です!!!
ロータリーの特別月間( Special Month in Rotary )とは?:
□ 各クラブと会員の活動を奨励するために、国際ロータリー(RI)理事会が定めた月間のこと。9月と10月は、日本独自の月間テーマも設定されています。
7月 - 1月 職業奉仕
8月 会員増強 2月 平和と紛争予防
9月 教育と識字率向上/ロータリーの友月間 3月 水と衛生
10月 地域社会の経済発展/米山月間 4月 母子の健康
11月 ロータリー財団 5月 青少年奉仕
12月 疾病予防と治療 6月 ロータリー親睦活動
□
なお、特別月間に加え、ロータリーの特別週間(Special
Weeks in Rotary)もいくつか定められています。例えば、2月23日から3月1日は、
「世界理解と平和週間」(World Understanding and Peace Week)です。
ロータリーの創始者であった、ポール・ハリスが、友人3人とはじめて会合を
持った、1905年2月23日にちなんで定められたようです。
この日が、ロータリークラブの世界最初の例会の日でした!
Ⅱ.ロータリー財団の生い立ちと知っておくべき特筆事項:
(1)
国際ロータリー(Rotary International)とロータリー財団
(Rotary Foundation)は、なぜ分かれているのか? 両者はどういう関係か? と質問されたら、どう答えたらよいでしょうか?:
□
ロータリー財団の正式名称は、「国際ロータリーのロータリー財団」となっています。
The Rotary Foundation of Rotary International(通称TRF)です。
国際ロータリー内ではあるが、独立した組織となっている、ということですね。
□
TRFは、1917年に、世界大会で「ロータリー基金」として提案され、
1928年に、「ロータリー財団」に名前を改称して、RIから独立した別組織となり、1931年に、財産を管理する信託組織となりました。しかし、当初はなかなか寄付が集まらなかったようです。
その後、1947年のポール・ハリスの逝去を機に急成長し、
1983年に、「非営利財団法人」として認定されています。
□
つまり、TRFは、税金の優遇措置(所得税控除)を享受して寄付金を募 るため、RIから独立した組織にしているが、「RIと一心同体」で、RIの目 的のために運営されている、というのがRIとTRFの関係です。
□
現に、TRFは、元RI会長を含む15名の管理委員および事務総長によって運営されていて、管理委員はRI会長エレクトが指名し、RI理事会が承認
しています。任期は4年です。
(2)
ロータリー財団にも生みの親がいます。
「ロータリー財団の父」と言われているのは、アーチ・クランフ(Archibald Klumph)さんです。クランフ、という名前の最後尾の綴り「ph」から判断すると、ドイツ系の移民の方だと推察されます。クランフさんは、一体はどんな人?:
□
1869年6月6日、ペンシルバニア州の貧しい家庭に生まれ、家計を助けるため12歳で学校を辞め、仕事に就いたそうです。18歳で、ある材木会社の雑用係に採用されてから昇進を重ね、総支配人、経営者になったようです。その後、不動産業、銀行業でも手腕を発揮しました。興味深いのは、フルート奏者として、14年間にわたり、アメリカ5大オーケストラの1つ、オハイオ州にある、名門クリーヴランド交響楽団で活躍したことです。文武二道?
ペンシルバニア州といえば、今回の大統領選挙の最激戦地区ですが、歴史的にはアメリカ合衆国発祥の州と言えます。アメリカの独立宣言はペンシルバニア州のフィラデルフィアで採択されました。1776年7月4日のことでした。この7月4日がアメリカの独立記念日です。また合衆国憲法もフィラデルフィアで
立案されています。
またその85年後、合衆国23州と南部連合国11州が対立した南北戦争
(1861年―65年)では、その転換点となった、ゲティスバーグの戦い
(1863年)が有名ですが、ゲティスバーグもペンシルバニア州です。
戦いの数か月後に戦没者墓地でエイブラハム・リンカーンがおこなった
「ゲティスバーグ演説」は、米国史上、最も重要で最も有名なスピーチと言われています。アメリカの小学生は、全員このスピーチを暗唱させられるほどです。
ゆっくりしゃべっても2分間弱のスピーチですが、ご参考に冒頭と結びの
部分をご紹介します:
「87年前、われわれの父や祖父たちは、自由の精神を心に、 そしてすべての人は平等に生まれているという信念のもと、新しい国をこの大陸に誕生させた。~ これらの戦死者の死を決して無駄にしないために、この国に神の下、新しい自由を誕生させ、そして、人民の人民による人民のための政治を、地上から決して消滅させないために、われわれはここに固く決意するものである。」
「 Four score and seven years ago our fathers
brought forth, on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and
dedicated to the proposition that all men are created equal. ~
~ that we here highly resolve that these dead
shall not have died in vain – that this nation, under God, shall have a new birth of freedom-
and that government of the people, by the people, for the people, shall
not perish from the earth.
November 19, 1863 Abraham Linc」
というわけで、クランフさんが生まれたのは、南北戦争が終結した4年後のことでした。日本では、明治2年ですね。
またクリーヴランド交響楽団のある、オハイオ州は、ペンシルバニア州の西隣りの州ですが、アメリカの大統領選挙では、「オハイオを制する者が、大統領に!」というのが定説でした。今回トランプ大統領は、オハイオは制しましたが、勝利出来なかったようです。
□
クランフさんは、1911年、42歳の時に、クリーヴランドRCのチャーターメンバーとして入会、職業分類は「木材卸売り、小売り」でした。
その後、国際ロータリーの第6代会長となっていた1917年6月、アトランタの世界大会で、「基金を作って、世界的規模で、教育、社会奉仕の分野で何か良いことをしよう」と提案することになります。
□
なお、アーチ・クランフの功績の特筆事項として、ロータリーの標準定款・細則作成の責任者であったこと、地区ガバナー職を創設したこと、また年次地区大会等、現在のロータリーの基本的な仕組みを作ったことが挙げられます。
クランフさんは、1951年にご逝去、享年82歳でした。
□ クランフさんが残した言葉:
「私たちは、自分のためだけに生きるのではなく、他者に何か良い事をする
喜びも生きがいとするべきである。」
英語の原文は:We should not live for ourselves alone, but for the
joy of
doing good for others.
ロータリーのモットーとされているのは「超我の奉仕(Service above self)」ですが、クランフさんの言葉も、わかりやすくて的確な表現だと思います。
Ⅲ.ロータリー財団の財務状況:
(1)
年間収支: 2018-2019年度の数字を、1ドル¥100換算で円表示にしました。
◆特筆事項:
財団の年間収入の合計は、360億5千万円で、内訳は、寄付金収入が
321億9千万円、投資からの収入が38億6千万円、となっています。
収入と支出の収支差は、23億円で、純資産が1年間で23億円増えました。
(ご参考:国際ロータリー)
〈収入〉1.寄付金合計: 321億9千万 (構成比)(会費 78億)
内 年次基金 124億9千万 (39%)(1人当たり$70)
年次基金重点分野 1億2千万
補助金への現金拠出 24億7千万
ポリオプラス基金 128億7千万 (40%)
恒久基金 26億3千万 ( 8%)
使途推奨基金 16億1千万
2.投資収益合計: 38億6千万
内 年次基金 14億5千万
ポリオプラス基金 1億5千万
恒久基金 21億3千万
使途推奨基金 1億3千万
3.収入合計: 360億5千万 (113億2千万)
◆寄付金収入に関する特筆事項:
①寄付金収入の内、年次基金寄付が全体の39%、またポリオプラスが、
年次基金を上回る40%を占めています。日本での寄付は、年次基金が
71%、ポリオプラスが16%となっているので、世界的には、いかに
ポリオプラスへの寄付が多いことか。
②寄付金収入合計額を全世界のロータリアン数120万人で割ると、
1人当たりの年間寄付額は26,800円になります。
内、年次基金寄付だけでは、年間10,400円の実績です。
ちなみに、全世界の120万のロータリアン数の内、北米のロータリアン数は
約45万人です。では、日本のロータリアンの数は?
〈支出〉1.補助金合計: 281億1千万
内 ポリオプラス 151億2千万
グローバル補助金 86億6千万
地区補助金 26億3千万
平和センター 5億1千万
使途推奨基金 11億4千万
パートナーシップ補助金 5千万
2.運営費合計: 54億1千万
内 ポリオプラス 1億8千万
ロータリー補助金 18億5千万
寄付推進 19億
一般管理費 14億8千万
3.その他: 2億3千万
内 為替差損 6千万
予備費充当 1億7千万 (RI)
4.支出合計: 337億5千万 (106億8千万)
〈純資産の増加〉 23億円 ( 5億8千万)
(2)
資産の状況:
◆特筆事項:
2019年6月末時点で、財団の総資産は1285億円で、内1220億円を
投資に回して運用しています。
ちなみに、ライオンズクラブの会員数は全世界で140万人、日本で11万人
と、ロータリークラブを凌駕しています。また、ライオンズクラブ国際財団の投資
運用額は約300億円らしいです。さらに、アメリカでは、ロータリークラブは
圧倒的に共和党支持者が多く、ライオンズは民主党支持者が多いという情報も
あります。
では、ライオンズとロータリー、何が違うのか、と質問されたらどう答えたら
良いでしょうか?
どちらも、国際的な奉仕団体。ライオンズの例会は月2回、ロータリーは4回。
会員数はライオンズの方が少し多いですね。しいて言うなら、ロータリアンは、
各自の職業で「4つのテスト」を実践しようとしている、と言えなくもありません。
※「4つのテスト」について:
4つのテストの内容を、事業所経営の観点から補足説明すると、こんな感じに
なるのではないでしょうか?
①
真実かどうか? Is it the truth? :
「その情報は間違いないか。フェイクではないか。物事の一面だけでなく、全体像を伝えているか。現地現物で確認したか。」
②
みんなに公平か? Is it fair to all
concerned? :
「そのやり方は、社員、お客様、関係者にとって不公平にならないか。」
③
好意と友情を深めるか? Will it build
goodwill and better friendship? :
「そのやり方は、社員やお客様との信頼関係や友好関係に寄与するか。」
④
みんなのためになるかどうか? Will it be
beneficial to all concerned? :
「そのやり方は、社員、お客様、関係者、そして世の中に貢献することが
出来るか。コンプライアンス上、問題はないか。」
(財団) (RI)
〈資産〉 資産合計: 1285億6千万 (145億9千万)
内 現預金 65億2千万
投資 1220億3千万
〈負債〉 未払金合計: 135億2千万
〈純資産〉純資産合計: 1150億3千万
内 年次基金 525億5千万
ポリオプラス基金 72億9千万
恒久基金 487億5千万
冠名指定寄付 25億
使途推奨基金 39億4千万
Ⅳ.ロータリー財団の運営方針:
(1)
財団の使命と標語:
①
財団の使命:
「世界の人々の健康状態を改善し、教育を支援し、貧困を救済することにより、
世界理解と世界平和を実現すること。」
②
標語:
1.「障害のある人のために、困窮している人のために、そして青少年のために」
2.「世界で良いことをしよう! Doing good in the world ! 」
(2)
投資の方針と現状:
①
財団への寄付金の種類:
◆特筆事項:
寄付金の種類によって、投資の方針が異なっています!
寄付金の種類は、大きく分けて3つです。
1.年次基金寄付:
当年の年次基金寄付金は、3年間投資に回された後、3年後の財団プログラムに
活用されます。
3年後に、その年の年次寄付金の50%が、DDF地区財団活動資金に、
また、残りの50%が、WF国際財団活動資金に回される、と言う仕組みのよう
です。
当クラブでは、年会費から1人100ドル相当の円貨を、その時点で日本財団が定めている為替レートで、「ロータリー財団月間」の11月に「年次寄付として」日本財団へ送金しています。
なお、「ポールハリスフェロー」というのは、累計1000ドル以上の年次寄付者への認証名です。
従って当クラブ会員には、少なくとも10年に一度、ポールハリス・フェローの
称号が届きます。
◆特筆事項:
世界的には、1人当たり、年間で100ドル以上、あるいは、月8ドル以上の
年次寄付が推奨されています。
なお、2640地区では、1人当たり、180ドルの年次寄付と
30ドルのポリオプラス寄付が推奨されています。
2.ポリオプラスほか使途指定寄付:
使い道をあらかじめ定めた寄付のことです。
◆特筆事項:
ところで、皆さん、ポリオプラスの「プラス」はどういう意味でしょうか?
3.恒久基金への寄付:
寄付金の元金(がんきん)は使わず、投資に回して運用益だけをプログラムに
使う、ということになっているようです。
1000ドル以上の恒久基金寄付者への、認証名はべネファクター(支援者)と
言われています。その他、1万ドル以上の大口寄付者等、いろいろ称号が
用意されています。
現在、ロータリアンとして、最高の栄誉は、「アーチ・クランフ・ソサイヤ
ティー(AKS)」の会員になることです。累計25万ドルの寄付で入会となり、国際大会等で特別待遇があるそうです。全世界で、1000人以上の会員がおり、会員数
1位はアメリカで500人以上、2位は台湾で100人以上、日本は50人強で
5位だそうです。
②
投資の方針と投資の現状:
〈基本方針〉
投資の不調がロータリーのプログラムに影響を与えないよう、3年分の運営費をカバー出来るだけの運営準備金を維持したい、と言うのが基本方針のようです。
1.年次基金の投資の現状:
3年間投資し、その投資収益で財団の運営費をカバーしたい、とのこと。
2019年度の収益率は、2.8%で、投資収益は14億5千万円でした。
一方、運営費合計の方は、54億円、内一般管理費だけを見ると、14億8千万円でした。
(注):ちなみに、2019年度の財団の収益率は+2.8%、
過去5年間の平均をとっても3.2%ですので、最近の財団の投資は
比較的うまく行っていると評価出来るのではないでしょうか。
2.恒久基金の投資状況:
株式への投資が中心で(構成比53%)、より高い収益を狙っているようです
(その分、リスクも高いと思われますが)。2019年度の収益率は、年次基金の収益率2.8%を大きく上回る、4.7%でした。
投資先は、株式以外には、ヘッジファンド(11%)、不動産(10%)、天然資源(3%)他、が入っています。
3.ポリオプラス:
元金を守るために、確定利回り付きの国際や社債等、に限っているようです。
(3)
補助金支給の方針と財源について:
①
補助金に関する財団の位置づけ:
「財団は、寄付を受け、ロータリークラブや地区を通じ、人道的・教育的な活動に
資金を分配する非営利団体である。」という位置付けです。
②
分野別補助金の行方:
〈地区補助金、グローバル補助金等、補助金合計の構成比です〉
2018年度実績(ポリオプラスは除いています)
疾病予防 41.1% 地域経済の発展支援 12.1%
安全な水対策 21.6% 母子の健康支援 8.3%
教育支援 12.7% 平和の推進 4.1%
③
財団の現在の補助金制度はどうなっているのか?:
1.地区補助金:
一括で地区に割り当て。DDF 地区財団活動資金の50%までを地区補助金として活用可。また、地区は、DDF資金の一部をグローバル補助金として利用可、
等々、、。
※2640地区の、2017-18年度の年次基金寄付額は、約2400万円、
3年後の2020-21年度の割り当て金額(申請限度額)は約1000万円。
2020-21年度の申請クラブ数は24クラブ、申請額は約500万円だった
ようです。
2.グローバル補助金:
WF国際財団活動資金から支給。15,000ドルから400,000ドルまで支給。プロジェクト全体予算が30,000ドル以上のプロジェクトのみ対象。また、現金拠出にたいしては、その50%を、またDDFの寄贈があれば
同額の100%を上乗せ、等々、、。
Ⅴ.ロータリー日本財団について:
※
私たちが寄付金を送る送金先が日本財団です。
(1)
ロータリー日本財団の事業内容は?:
「奨学金の付与、およびロータリー財団への寄付」となっています。
(2)2019年度の実績:
各ロータリークラブからの受取寄付金総額は19億7千万円でした。
一方、ロータリー財団への寄付実績は、15億3千万円でした。
◆特筆事項:
日本のロータリアン1人当たりの種類別 寄付実績:
(全国のロータリアン数は、88,309名で計算しました)
寄付金合計額 22,300円 (構成比 100%)
内 年次基金 15,800円 (71%)
ポリオプラス 3,600円 (16%)
恒久基金 2,600円 (12%)
その他の基金 330円 ( 1%)
Ⅵ.中ロータリークラブとして、ロータリー財団への寄付についてどう考えるか?:
(注)2020-2021年度 ロータリー財団委員会の考え、ということで
ご理解下さい。
□年次基金寄付についてどう考えるか?:
前述のように、中ロータリークラブでは、皆さんから頂く年会費から、
100ドル相当額を、年次基金寄付金として「ロータリー日本財団」へ寄付
しています。
この年間100ドルという金額をどう考えるか?
当委員会としては、100ドルは、年次基金寄付としての「世界基準」および
「日本基準」の最低限のベンチマークはクリアしていると考えたい、
と思っています。
しかし、日本財団の全国1人平均寄付額の15,800円や地区推奨金額を
少し下回りますので、
皆さんには、少なくとも年1回以上、「ロータリー財団ボックス」へのご寄付を
検討して頂ければ大変有難いと考えています。
以上
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